アメリカの心理学者ジェッカーとランディによる実験
【実験内容】
- 実験者が問題を出題し、正しい回答を行った分、実験を受けている人にお金が支払われる。
- 実は、正しい答えを出す数は、人によって異なるように、陰で実験者によってコントロールされていて、3ドルもらった人たちと60セントもらった人たちの2つのグループが作られた。
そして、ここからが本当の実験で、
- 3分の1の人は、実験者からお金を返してくれと頼まれる。
- 別の3分の1の人は、大学の事務員からお金を返してくれと頼まれる。
- 残りの3分の1の人は、誰からもお金を返してくれとは言われない。
- 実験の最後に、実験者に対する好感度を尋ねられる。
- その結果は、実験者から直接お金を返してくれと頼まれた人たちが、最も強く実験者に良い印象を示した。
しかも、60セントよりも3ドルを返した人の方が、実験者に対してより良い印象を持った。
いかがでしょうか?
普通は、一度もらったお金を返してくれと言われたら、相手に対して嫌な印象を持ちそうなものですよね?
でも、実験結果はその逆でした。
「申し訳ないけど、実験資金がなくなったから、お金を返してほしい」と、苦しい内情を正直に告白された方が誠実さが伝わって、お金を返すことになったにもかかわらず、良い印象を与える結果になりました。
しかも、60セントよりも3ドルを返した人の方が良い印象を持ったというのも興味深いです。
これには別の理由があります。
フランクリン効果
人間は、自分を世話してくれた人よりも、自分が世話をしてあげた人により強い好意を持ちます。
心理学ではこのようなことを、アメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンの名をとって『フランクリン効果』と呼んでいます。
※世話してくれた人よりも、世話してあげた人により強い好意を持つことについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
先ほどのジェッカーとランディの実験結果のように、60セントよりも3ドルを返した人の方が、実験者に対してより良い印象を持ったというのは、このフランクリン効果によるものだと考えられます。
認知的不協和の解消
人間は矛盾する生き物です。
ですが、できれば矛盾なく一貫性を保ちたいという気持ちが無意識にあります。
例えば、先ほどのジェッカーとランディの実験結果で言うなら、通常なら60セントよりも3ドルを返せと言われた方が、実験者に対する印象は悪くなるはずです。
しかしこの時、実験を受けている人の脳の中では特殊なことが起きます。
通常は、「3ドル返せと言われたから、この人は嫌な人だ」と思うはずのところを「私がこの人に3ドル返すということは、私はこの人のこと好きだからだ」というふうに、自分の行動を納得できるように無理やり正当化してしまうんです。
人間は、相手のために自分にとって不利益な行為をするとき、その行為を無理やり正当化するために、相手のことを自分にとって好ましい人物だと思い込もうとする傾向があります。
心理学ではこのようなことを『認知的不協和の解消』といいます。
フランクリン効果は、この認知的不協和の解消によって起こる現象です。
頼み方の実践
相手に頼み事をすれば、相手から好意を持たれるという話をこれまでしてきました。
ですが、頼みごとをするときも頼み方というものがあります。
当然ですが、ただ頼み事をいつもするだけでは、迷惑がられて終わりです。
自分の至らなさを軽く謝罪してから、小さな頼み事をたまにするのであれば、迷惑がられることもありません。
後日、お礼にランチをおごってあげたり、お土産を渡したりして接触頻度を上げるようにすれば、単純接触効果で好感度はさらに上がります。
まとめ
相手に好意を持ってもらうには、相手に小さな頼みごとをすると良いです。
人間は、世話してあげた人の事を好きになる傾向があるからです。
さらに、世話してもらってお礼と称してランチをおごるなどして、相手との接触頻度上げれば、好意を持たれる可能性はさらに上がります。
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